平成24年度は本研究課題の最終年度であり、研究対象地域である東シベリア・ヤクーツク周辺地域での永久凍土荒廃状況に関する現地観測結果を取りまとめるとともに、気候・衛星データ解析と合わせて統合的研究を推進し、最終成果である永久凍土荒廃地図の作成と、それら解析結果の国内・海外での公表を進めた。 ヤクーツク北方林(カラマツ林)内での総合気象観測と、植物蒸散量、永久凍土の地温・土壌水分観測の解析を、ロシア科学アカデミーシベリア支部・永久凍土研究所および北方圏生物問題研究所との共同で実施した。その結果、2004年以降の湿潤化に伴う永久凍土活動層の深化は過剰な土壌水分状態を伴い、引き続く年に湿潤ストレスによる森林の枯死と蒸散量の減少をもたらす経年的なプロセスが進んだことを明らかにした。この結果は、国際学術誌2編に投稿・掲載されるとともに、2013年2月にプレス発表を行った。 さらに、この湿潤化に伴う、森林と永久凍土の荒廃状況について、ALOS-PALSARのマイクロ波後方散乱値による水域・湿潤域分類と、ALOS-AVNIR-2の可視光とNDVI値による植生変化域分類の2つの衛星画像解析を組み合わせ、約10mの地上分解能にて、レナ川中流域の地温・土壌水分分布観測地点周辺における永久凍土荒廃状況の地図化を試みた。その結果、2006年から2009年にかけての森林荒廃地と湿潤域の分布はレナ川左岸では段丘の谷沿いと緩傾斜地に、右岸ではアラス草原を中心とする同心円状に広がる様子が明らかとなり、永久凍土中の含氷率と地形条件の違いを反映した湿潤化による水域の拡大と、それに伴う永久凍土荒廃状況の地図化が可能であることが明らかとなった。これらの結果は、GISデータとして取りまとめるとともに、その手法と成果について国内・海外の学会にて発表した。
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