本研究課題では、エアロゾル気候モデルSPRINTARSを用いて、エアロゾルの分布および気候に対する影響を現在から数十年~百年スケールで予測することを目的とする。SPRINTARSにはエアロゾルの気候に対する直接効果および間接効果のプロセスがほぼ導入されているが、エアロゾルと氷雲の相互作用プロセスのモデル化には未完成の部分があったため、まずはその開発を行った。その後、将来の気候変動に対するエアロゾルの効果を評価するための第1段階である、2001年に策定された人為起源排出量予測IPCC Special Report on Emissions Scenarios (SRES)を用いたシミュレーションを行った。その結果、21世紀中に黒色炭素エアロゾルは増加する一方、硫黄除去装置のさらなる普及により硫酸塩エアロゾルは減少するため、人為起源エアロゾルの対流圏界面における直接効果放射強制力は負値から正値に移行すると予測された。SRESを用いたシミュレーションは、次年度以降に行う新しいIPCC排出量予測シナリオRCPに基づいたシミュレーションとの比較・検討を行うためのリファレンスとなる。また、全球エアロゾルモデル相互比較プロジェクトAeroComによる過去のエアロゾル関連排出量データ、およびRCPの過去・将来のデータをSPRINTARSで利用できるように整備し、次年度以降の研究推進に備えた。今年度の研究成果として、1件の査読論文発表と6件の学会口頭発表を行った。
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