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2011 年度 実績報告書

近年の氷河変動が雪氷微生物群集に与える影響評価

研究課題

研究課題/領域番号 21681003
研究機関千葉大学

研究代表者

竹内 望  千葉大学, 大学院・理学研究科, 准教授 (30353452)

キーワード氷河 / アイスコア / アラスカ / 雪氷藻類 / 雪氷生物 / ヒマラヤ / クリオコナイト / 風送ダスト
研究概要

本年度は,8月に中国およびスバルバードの氷河の調査を行った.中国の氷河調査は,ウルムチNo.1氷河でおこない,昨年に引き続き今回は4回目である.従来通り標高別に6カ所で,微生物群集,クロロフィル,総汚れ量,有機物量,溶存成分,炭素窒素安定同位体比,遺伝子分析用の各サンプルを採取するルーチンワークをおこなった.今年度は,例年になく融解が進んでおり,雪線が今までの中で最も高い位置にあった.スバルバードの氷河は,今年度より開始した英国Aberystwyth大学との共同研究で行った.この氷河は英国の研究者によって氷河の化学的データが測定されており,今回この科研費の枠組みでの微生物に関する調査を行った.スバルバードのロングヤビン氷河およびフォクスフォンナ氷河の二カ所で調査を行い,微生物群集,クロロフィル,総汚れ量,有機物量,溶存成分,炭素窒素安定同位体比,遺伝子分析用の各サンプルを採取した.これらのサンプルの分析データは,氷河生態系の地理的な分布の比較に用いる予定である.
今年度さらに,今年度および昨年度までに得られた雪氷サンプルの生物化学的分析をすすめた.2010年度調査を行ったアラスカの氷河の分析の結果,氷河の末端部や中流部で10年前の結果と比べて微生物群集に変化がみられた.これは,氷河変動の影響が微生物群集に現れている可能性がある.さらに,炭素窒素安定同位体比や鉱物成分,汚れ量にも変化がみられた.これらの結果から,氷河上の生物化学的条件が過去10年で大きく変化していることが明らかになった.今後さらに他の氷河の分析を進めるとともに,成果を発信していく予定である.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の目的である過去に調査を行った氷河の再調査を,アラスカ,ヒマラヤ,中国で行うことができた.さらにこれらの調査で得られたサンプルの生物化学的分析も,ほぼ予定通り進んでいる.これらの分析結果から,実際に過去10年で生物化学的条件,微生物群集構造が変化している事実を明らかにすることができた.

今後の研究の推進方策

次年度が最終年度なので,今年度までに得られたサンプルの生物化学分析をまず完了させる.特に氷河上の融解水の化学成分やpHの変化,微生物のバイオマスおよび生物群集構造の変化,微生物群集の高度分布の変化に注目する.さらに,各地域の物理的な変化,氷河末端変動や気象条件などの記録をあわせ,現在の氷河の変化に対応し氷河生態系にどのような変化が起きているのかを明らかにし,今後さらに温暖化がすすみ氷河の後退した場合に起こりうる生態系の変化を予想する.分析結果の過去のデータとの比較から,各地域の氷河ごとの変化をそれぞれ明らかにする.遺伝子分析結果などは,今後の変化のモニタリングに役に立つデータを整理する.

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2011

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (4件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Microscopic Analyses of Insoluble Particles in an Ice Core of Urumqi Glacier No.1 : Quantification of Mineral and Organic Particles2011

    • 著者名/発表者名
      Takeuchi, N., et al.
    • 雑誌名

      Journal of Earth Science

      巻: 22 ページ: 431-440

    • DOI

      10.1007/s12583-011-0197-2

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Favorable climatic regime for maintaining the present-day geometry of the Gregoriev Glacier, Inner Tien Shan2011

    • 著者名/発表者名
      Fujtia, K., Takeuchi, N., ほか
    • 雑誌名

      The Cryosphere

      巻: 5 ページ: 539-549

    • DOI

      10.5194/tc-5-539-2011

    • 査読あり
  • [学会発表] アジア山岳氷河のマルチ安定同位体研究~環境変動と氷河生態系2011

    • 著者名/発表者名
      竹内望
    • 学会等名
      環境同位体シンポジウム
    • 発表場所
      京都市(招待講演)
    • 年月日
      2011-09-30
  • [学会発表] アラスカ,グルカナ氷河の表面アルベドと不純物,雪氷藻類群集の過去10年間の変化2011

    • 著者名/発表者名
      竹内望
    • 学会等名
      雪氷研究大会
    • 発表場所
      新潟県長岡市
    • 年月日
      2011-09-20
  • [学会発表] Asian glacier ecosystems : Biological study on Urumqi Glacier No.12011

    • 著者名/発表者名
      Nozomu Takeuchi
    • 学会等名
      The Celebrations of 50th Anniversary of Tienshan Glaciological Station & Symposium on Science and Monitoring of Glaciers
    • 発表場所
      中国新彊ウルムチ市(invited)
    • 年月日
      2011-08-08
  • [学会発表] 中央アジア天山グリゴレア氷帽アイスコアに記録された12,500年間の酸素安定同位体比の変動2011

    • 著者名/発表者名
      竹内望, ほか
    • 学会等名
      日本地球惑星連合大会
    • 発表場所
      千葉県千葉市
    • 年月日
      2011-05-26
  • [図書] 中央ユーラシア環境史2011

    • 著者名/発表者名
      奈良間千之編, 竹内望, ほか
    • 総ページ数
      312
    • 出版者
      臨川書店

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公開日: 2013-06-26  

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