本研究の目的の一つは、キレート錯体形成能を有する有機酸アニオンを層間にインターカレートした層状複水酸化物(LDH)を用いて、プロセス溶液からレアメタルを捕捉することである。本年度は、クエン酸型、リンゴ酸型、酒石酸型マグネシウム-アルミニウム系LDHの金属イオン捕捉能を検討するため、銅イオン、カドミウムイオン捕捉の速度解析を行った。 クエン酸型LDHによる銅イオン捕捉は層間内で起き、銅クエン酸型錯体が生成していると考えられる。速度式は1/(1-x)=kt+1と表せる(xは銅イオンの捕捉率)。各温度における1/(1-x)vstプロットはよい直線性を示し、直線の傾きから速度定数は10℃、20℃、30℃においてそれぞれ5.1×10^<-2>、1.0×10^<-1>、2.3×10^<-1>min^<-1>であり、アレニウスプロットよりこの反応の活性化エネルギーは53.1kJmol^<-1>となった。従って、この反応は化学反応律速であり、LDH層間においてクエン酸イオンと銅イオンがキレート錯体を形成することにより、Cu^<2+>を捕捉できることが示された。同様に速度解析を行うことで、クエン酸型LDHによるカドミウムイオン捕捉の活性化エネルギーは53.6kJmol^<-1>、リンゴ酸型LDHによる銅イオン、カドミウムイオン捕捉は71.2、50.8kJmol^<-1>、酒石酸型LDHによる銅イオン、カドミウムイオン捕捉は47.9、106.5kJmol^<-1>であることを見出し、それぞれ化学反応律速であることがわかった。
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