研究代表者は、キレート錯体形成能を有するクエン酸(CA)、リンゴ酸(MA)、酒石酸(TA)を層間にインターカレートしたMg-Al系層状複水酸化物(Mg-Al LDH)が、水溶液中の金属イオンを捕捉できることを明らかにした。しかし、反応の過程においてLDHからのMgイオンの溶出が大きかった。そこで本年度は、LDHホスト層の2価金属としてMgよりも溶解度積の小さいNiを用いて有機修飾Ni-Al LDHを合成し、金属イオンの捕捉を検討した。 CA溶液、MA溶液、TA溶液各250mLを30℃で攪拌し、Ni/Alモル比3.0、[Ni2+]+[Al3+]=0.5MのNi-Al混合溶液250mLを滴下した。pHは7.0に保持した。1h攪拌後、生成物を濾過、洗浄、減圧乾燥した。生成物は、それぞれCA、MA、TAイオンを層間にインターカレートしたNi-Al LDHであった。生成物のNi/Alモル比は2.5であり、CA/Al=0.63、MA/Al=0.84、TA/Al=0.91であった。1.0mMのCu2+溶液500mLに、合成したNi-Al LDHを有機酸イオン/Cu2+モル比2.0で加え、30℃で、pHを5.0に保ちながら攪拌した。CA型を用いた時Cu2+濃度は急激に低下したが、MA型およびTA型については、ほとんど濃度低下は見られなかった。CA型以外では、有機酸イオンがLDHホスト層のOH基と置換され、ホスト層とホスト層の間で架橋構造を形成したため、LDH層間において有機酸イオンのキレート形成能が低下したと考えられる。またMg-Al LDHと比較して、Ni-Al LDHではホスト層2価金属の溶出は、全ての場合において大きく抑制することができた。以上、ホスト層の金属を選択することにより、溶解しにくく、かつ溶液中から金属イオンを捕捉可能な有機修飾LDHを合成できる可能性が示された。
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