研究課題
本研究では高温プロセスから排出される残留性有機ハロゲン化合物について、その主要生成サイトであるダストやフライアッシュの化学状態を詳細に解析する一方、HClやHFによる炭素の表面ハロゲン化実験を行い、有機ハロゲン化合物の生成機構を解明するとともに、排出抑制を可能にする技術を確立することを目的とする。特に、本年度は有機ハロゲン化合物の生成を制御する支配要因の解明を目指し、フライアッシュ中のキーエレメント(炭素物質、ハロゲン化合物、触媒種)のミクロ構造解析に取り組み、有機フッ素の含有量との関係を定量的に評価した。その結果、以下の結論を得た。1.微粉炭燃焼由来のフライアッシュ中には50~130μg/gのフッ素が含まれ、その多くはアッシュ表面の未燃炭素と結合した状態で存在する。2.アッシュ中には05~5mass%前後の炭素が含まれ、その表面にはカルボキシル基・ラクトン・酸無水物といった種々の含酸素官能基が存在し、その量は652-1300μg/gの範囲であった。3.昇温脱離(TPD)測定の結果、アッシュ中には高い反応性を有する表面CaCO_3が存在し、これはバルクのCaCO_3に比べ低温(650℃前後)でCaOに変化する。4.有機フッ素の量は、700℃までにCOやCO_2を放出して炭素活性サイトに変化するカルボキシル基・ラクトン・酸無水物の濃度もしくは表面CaCO_3の濃度が増加すると直線的に増大する。以上の結果を総合すると、難分解性有害有機フッ素化合物は、排ガス中のガス状F化合物(HFやF_2など)とフライアッシュ中の炭素活性サイトや表面CaCO_3の相互作用を通して形成されることが強く示唆された。
すべて 2009
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)
Energy & Fuels 23
ページ: 4774-4781
Proceedings, The 10th Japan-China Symposium on Coal and C1 Chemistry 10
ページ: 1-2