研究課題
廃水処理プロセス中におけるプラスミドの種類・数の存在は、明らかとなっていない点が多く、プラスミドオーグメンテーションのバックグラウンドとしての基礎的な知見を集積することを目的とした。大阪府下のM下水処理場より採取した活性汚泥を実験に供した。抗生物質としてストレプトマイシン、アンピシリン、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、重金属として塩化水銀(II)、亜ヒ酸ナトリウム、セレン酸ナトリウム、硝酸鉛(II)、塩化カドミウム2.5水和物を単独で添加したR2A寒天培地に段階希釈した活性汚泥試料を塗布し、28℃、7日間の培養で形成したコロニーを耐性菌と判断した。従属栄養細菌数(CFU/mL)は10^8オーダーで検出され、耐性細菌はTcの10^4オーダーを除いて、全て10^6~10^7オーダーで検出された。各選択圧から23~80株(合計417株)を選択し、プラスミドの保持を確認した。83株においてプラスミドが検出され、検出されたプラスミドの総数は113本であった。伝達能に関わる遺伝子の保持に必要な30kb以上が77%を占め、検出されたプラスミドの大部分が伝達能を有する可能性が考えられた。また、プラスミドを保有している83株のうち48%が不和合性群IncP-1のプラスミドを保有していることが分かった。IncP-1プラスミドは、多様な細菌が保有可能な広宿主域のものであり、自己伝達能や各種の耐性・分解能をもつものが多い。下水処理場の活性汚泥中では、IncP-1プラスミドなどにコードされた伝達因子によってさまざまな薬剤に対する耐性能が自然に受け渡しされ、維持、されているものと考えられた。
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Journal of.Bioscience and Bioengineering
巻: 110 ページ: 684-689