研究課題
大阪府下の都市下水処理場の最初沈殿池、曝気槽、最終沈殿池の各末端部分から汚泥を採取した。最初沈殿池越流水のTerminal Restriction Fragment Polymorphism(T-RFLP)プロファイルは採取時期によらず類似しており、下水処理場には常に同様の微生物群が流入していることが示唆された。また、曝気槽活性汚泥、返送汚泥でも採取時期によらず類似のT-RFLPプロファイルが観察され、活性汚泥中の優占微生物は時期に関係なく安定したポピュレーションを維持していることが示唆された。Biolog法による炭素源資化能の調査の結果、活性汚泥微生物群は、時期によらず幅広い基質を資化するポテンシャルを有していることが示唆された。また、昨年度採取した活性汚泥中の細菌株のうち、プラスミドを複数保持していたものの属種の同定を行った。4種以上のプラスミドを持つグラム陰性細菌として、テトラサイクリン(Tc)耐性細菌Tc2-1株、クロラムフェニコール(Cm)耐性細菌Cm2-13株、アンピシリン(Ap)耐性細菌Ap1-10株、水銀(Hg)耐性細菌Hg1-2株、また、グラム陽性細菌としてセレン(Se)耐性細菌であるSel-1-22株の特徴を調べた。Tc2-1株はshigella属、Cm2-13株はAfipia属、Ap1-10株はAcidovorax属、Hg1-2株はAcidovorax嘱、Se1-1-22株はLeucobacter属と高い相同性を示した。これらのうち、IRcP-1プラスミドの複製制御遺伝子ケ溜遺伝子が検出されたのは、Ap1-10株だけであった。また、Tc2-1株およびHg1-2株のプラスミド抽出液からは、それぞれテトラサイクリンの細胞外への排出に関与するtetA遺伝子および水銀の還元酵素を司るmerA遺伝子が検出された。これらの細菌の保持するプラスミドは30kb以下のものが多かった。
2: おおむね順調に進展している
活性汚泥の微生物群集をTRFLP法とBiolog法で予定通り評価できた。ただし、DNAマイクロアレイ法による評価は、予想以上に技術的困難を伴うため実施しなかった。また、プラスミドを複数保持していたものの属種の同定も、予定通り実施できた。
微生物群集のデザイン化として、セルオーグメンテーション、プラスミドオーグメンテーションなどの事例研究を実施する。
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Biodegradation
巻: VOL.23 ページ: 263-276
10.1007/s10532-011-9505-x