研究概要 |
これまで主として栄養塩の吸収・除去による富栄養化対策に用いられてきた水生植物による水質浄化法(植生浄化法)とその根圏に棲息する微生物(根圏微生物)の共生系を1つのシステムとして扱い、微生物の各種化学物質分解能も活用する新規ファイト/バイオレメディエーション技術へと展開するべく、各種汚染への適用範囲が広く、経済的かつ効率的な"根圏浄化法"の確立を研究の全体構想としている。 本研究では、そのうち、特に水生植物による特定の根圏微生物の選択的集積メカニズムを明らかにし、根圏浄化法を合理的かつ効果的に適用するための知見を集積した上で、化学物質汚染浄化に資する根圏浄化法のプロトタイプを構築することを目的としている。平成22年度はウキクサ根圏から分離された4-tert-ブチルフェノール(4-t-BP)分解菌Sphingobium fuliginis OMI株がウキクサの根分泌物によって、どのように4-t-BP分解促進しているのか、根分泌物の添加/非添加によって作成した実験系で明らかにすることを試み、根分泌物がOMI株の増殖や4-t-BP分解酵素の誘導を引き起こすのではなく、4-t-BPの毒性を緩和することによって分解を促進している可能性と4-t-BPの分解中間体の代謝を促進している可能性を示すことができた。その他、ウキクサ-根圏微生物共生系で、フェノール、アニリン、2,4-ジクロロフェノール、ノニルフェノール、ビスフェノールAなどの多様な化学物質の分解が促進されること、ヨシ根圏にも4-t-BP分解菌が存在していたことなどを明らかにした。
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