無機二次元ナノ結晶(ナノシート)とは、厚さ約1nm、縦横方向は数μmの広さを持つ量子サイズ効果を有する単結晶である。厚さ方向は結晶のほぼ1~3ユニットから構成されているため、表面または界面での結合状態によってそのナノシート全体の物性が大きく変化する。また、ナノシートの表面は電荷を帯びているため、静電的相互作用を利用して層数を制御できたり、層間に別の機能分子をインターカレートすることによりナノシート自身の持つ機能とを組み合わせた超格子構造の多機能型新層状物質を簡単に作製できるなど極めてユニークな特徴がある。これまでの研究で、我々はナノシートに発光中心を導入させることで、紫外線を吸収して赤・緑・青に発光する発光ナノシートを開発してきた。本年度は、これらの発光ナノシートを交互吸着法(LBL)法により積層させて多色発光超格子膜の作製や、1枚のナノシートで発光色を変えることができる発光ナノシートの作製を目指した。多色発光ナノシートの作製においては、赤・緑・青に発光するGd_<1.4>Eu_<0.6>Ti_3O_<10>ナノシート、La_<0.7>Tb_<0.3>Ta_2O_7ナノシート、Sr_<0.75>Bi_<0.15>Ta_2O_7ナノシートをLBL法で単層積層させることに成功し、積層構造によって白、紫、黄色、青緑、橙色等などに発光色を変化させることに成功した。また、Sr_<0.75>Bi_<0.15>Ta_2O_7ナノシートにEu^<3+>やTb^<3+>をドープすることにより、1枚のナノシートで白色に発光するナノシートの作製にも成功した。ナノシートの発光を用いた応用研究として、TiNbO_5ナノシート層間にEu^<3+>やTb^<3+>をインターカレーションしたナノシート層状体を作製しその発光のpH依存性を評価したところ、酸性領域では緑、中性では黄色、アルカリ性では赤色に発光することが示された。これらのナノシート発光体は、今後イオンや分子の発光センシングプローブとして応用が期待される。
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