酸化物系蛍光ナノシートの発光中心は非常に表面近傍に位置するため、その発光は吸着イオンに非常に敏感であり、特定のイオン・分子をセンシングする発光プローブとして期待されている。有機錯体や硫化物系・セレン化合物系ナノ粒子蛍光体も発光プローブとして研究されているが、酸化物ナノシート蛍光体はこれらのナノ蛍光体と比較して、安定かつ無害といった利点があるため、長期間の使用に耐えられる環境モニター用の発光材料として期待されている。本研究では、高い発光効率を示し、かつ、吸着イオンに蛍光特性が大きく影響をうける蛍光ナノシートの開発を目標に研究を進めた。本年度は以下の3テーマを実施した。 1)高い発光効率を持つLaNb_2O_7ナノシートの開発:層状構造を持つKLaNb_2O_7酸化物を剥離することによりLaNb_2O_7ナノシートを作製した。このナノシート分散水溶液を150℃の水熱条件下で24時間処理すると、処理前は殆ど蛍光を示さなかったナノシート分散液が非常に強く青に光ることを見出した。しかしながら、発光メカニズムに関して、なぜ、熱処理により青に発光するかは明らかにすることができなかった。 2)ナノシート薄膜を用いた希土類イオンの発光センシング:約1nmの膜厚の酸化チタン系ナノシート薄膜表面に希土類イオン、特に、Eu^<3+>が吸着するだけでEu^<3+>の蛍光強度が大きく増大することを見出した。つまり、無機物と分子・イオンの吸着でも特定の条件を満たせば、金属錯体のように、強い発光を得られることを示すことができた。 3)希土類ドープSr_<1-x>Bi_x、Ta_2O_7ナノシートの多色発光を用いたPHセンシング:上記のナソシートは希土類イオンのドープ量を調整することで、赤、橙黄、白色など、発光色を制御できることを見出した。これらのナノシートを用いてpH変化を発光変化で示せないか検討したところ、Sr_<0.8>Bi_<0.1>Eu_<0.1>Ta_2O_7ナノシートはアルカリ性では白色、中性付近では橙色、酸性付近では暗い赤色と、pH変化に応じて発光色が変化することを見出した.
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