今後の電子機器のさらなる高速化を阻む大きな要因である磁性材料のスヌーク限界(透磁率と応答周波数限界のトレードオフ現象)を突破するには、強固で滑らかな磁化容易面を有した飽和磁化の大きな絶縁体が必須である。しかしながら、そのような物質は天然には存在しない。そこで、本研究ではナノ粒子の集積制御技術を駆使して、このスヌーク限界を大きく超える高周波特性を有する人工物質の創成を目指している。 平成22年度は、平成21年度に設計・製作したガス中蒸着装置に、回転磁場を印加できる装置、ロードロックチャンバー、及び高周波誘導加熱機構を増設し、超高真空チャンバー中で蒸発させたコバルトのナノ粒子集積体の構造制御を試みた。 一方、湿式法からのアプローチでは、前年度に成功したコバルトフェライトナノ粒子の容易軸の配向制御を面内配向に発展させるために、磁場中加熱装置サンプルホルダー連続回転機構を設計・製作し、ナノ粒子集積体を作製した。また、前年度に開発したナノ粒子の超常磁性揺らぎと配向トルクを受けた粒子のブラウン運動の同時シミュレーション法を用いた結果から、交流の面直磁場を印加するだけでも強磁性ナノ粒子の面内配向構造がある種の散逸構造として形成されることを明らかとした(論文投稿中)。 さらに、本研究に関して、ランダムな集積がもたらす特異な現象やナノ粒子集積体の活性化体積の解析法に関する考察から得られた新たな知見については誌上等で公表した。
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