平成21年度はまず、実験用いる試料として、高純度の金属型・半導体型カーボンナノチューブ(CNT)の調整法の確立を行った。新たに開発したカラムを用いた分離法を用いて、異なる条件での分離を組み合わせることで、金属型・半導体型ともに純度が99%程度のCNTを得る系を確立した。一方で、水晶振動子マイクロバランス(QCM)を用いた、金属型・半導体型CNTとアガロース・界面活性剤(SDS)の相互作用解析を行うための、センサーチップ上にCNTを固定化する方法を検討した。CNT分散液を直接基板に滴下・乾燥した場合では、CNTが凝集して均一にならないため、測定値が大きくばらつく結果となった。そこで、CNTを固定化する前に、センサーチップ上の表面処理を行った後、CNTを堆積させると非常に均一性の高い膜が形成され、測定精度が大幅に改善することを見いだした。また、CNT自体のゼータ電位測定を行うための条件検討を行った、上記の方法で調整した高純度分離CNTを様々な分散剤で分散したものを調製し、それぞれにっいてゼータ電位測定を行った。本測定においても結果のばらつきが認められた。分散剤の交換が不十分であると、分離試料調製時の分散剤の残留分がゼータ電位測定に影響を与えることや、再現性のある測定のためには、測定前に超音波処理を施し、十分分散した状態にする必要があることなどが明らかとなった。これまでに得られた再現性の高い測定条件を用いて、次年度以降、詳細な測定と解析を行っていく予定である。
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