平成22年度は、前年度までに確立した再現性の高いゼータ電位の測定法を用いて、分離した金属型カーボンナノチューブ(CNT)と半導体型CNTのゼータ電位測定を行った。まず、高純度の金属型と半導体型の分離CNTを複数段のカラム分離によって調製した。その後、CNT自体のゼータ電位の情報を得るために、分離に用いたイオン性の界面活性剤を非イオン性の界面活性剤に置換した後にゼータ電位測定を行った。複数種類の非イオン性界面活性剤を試した結果、未分離CNT、分離半導体型CNT、分離金属型CNTのゼータ電位に相関関係があることが判明した。この結果から、ゲルを用いた金属型・半導体型CNTの分離において、金属型と半導体型のCNTのゼータ電位の差異がCNTと界面活性剤の相互作用に影響を与え、金属型と半導体型のCNTでゲルに対する吸着力が異なることとなり、結果的に金属型と半導体型のCNTが分離される可能性が示唆された。また、ゲルを用いた金属型と半導体型CNTの分離機構について、ドイツのカッペス教授らのグループが主張するバンドルサイズの違い(金属型CNTは孤立分散する一方で、半導体型CNTはバンドルを形成し、それらがゲルの分子ふるい効果で分離されるというもの)でなく、ゲルに対する金属型CNTと半導体型CNTの選択的な相互作用(半導体型CNTが優先的に吸着し、金属型CNTは吸着されない)によることを改めて確認し、論文を発表した。今後は、本研究で得られた結果を論文にまとめ、発表する予定である。
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