前年度までに、光学顕微鏡に搭載可能なコンパクトな高速AFMを試作したが、タンパク質のイメージングは行えるが、予定していたイメージングレートを得られないことが判明した。本年度は顕微鏡本体の剛性を高めるとともに、カンチレバーホルダーの材質・形状を検討し、さらに光軸トラッキングの高精度化を行うことで走査性能の向上を図った。前年度までの試作機では多くの部品をアルミニウムで製作していたが、今回、本体ベース部をステンレスに変更し顕微鏡本体の剛性を高くすることで、低周波の振動を抑えた。また、Z圧電体を絶縁仕様で大型のものに変更することで、カンチレバーホルダーの小型化を行った。また、カンチレバーホルダーの材質を軽量で硬い材質であるSiCで製作することにより、ホルダー自体の振動を抑えることができた。これらによりカンチレバーを搭載した状態で、Z圧電体の共振周波数90kHzが得られた。また光軸トラッキングについては、トラッキング用走査にティップ走査とは独立に回転走査機構とゲインを付加することで、トラッキングの精度を高めた。これらの改良により、300ms/frameでタンパク質のイメージングを行えるようになった。現状ではカンチレバーを接着剤で固定しているが、この方法では低周波数での振動が発生し安定な高速イメージング実験が難しいという問題がある。そのため現在、機械的にカンチレバーを固定するためのカンチレバーホルダーを試作している。一方、蛍光顕微鏡との同時観察に向けてカンチレバーの変位検出用レーザーを赤外光に変更し、カンチレバーの変位を検出できることを確認した。また、ティップを試料に近づけると、散乱光によりティップのおおよその位置をCCDカメラで確認できることが分かった。
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