研究概要 |
近年、分析・合成反応など様々な花学プロセスを集積化する研究が多く報告されているが、さらに飛躍な高効率化のためには、ポンプなどの流体駆動デバイスを集積化する必要がある。しかし、流体駆動デバイスは通常電力を用いるため、現在の技術では集積度に限界がある。一方、本研究代表者は生体の心筋細胞・血管細胞は化学的・力学的機能が高度に集約化された素子であり、生体内で高度な流体駆動・制御を実現していることから、これを利用することで飛躍的に集積度の高いマイクロ流体駆動デバイスを実現できると着想した。そこで、本研究の目的はマイクロ構造体と細胞・組織の機能を融合したバイオマイクロデバイスの創成とする。細胞は、心筋細胞および流量センシング機能をもつ血管内皮細胞・流量制御機能をもつ血管平滑筋細胞を用いる。具体的には、以下の3課題に取り組む。 1. マイクロ擬似心臓の開発 2. 血管細胞デバイスの原理検証 3. 心筋・血管細胞を有機的に結合させたマイクロティッシュデバイスの開発 本年度は、上記1および2の課題に取り組んだ。課題1に関して、柔軟な材料であるポリジメチルシロキサン (PDMS)の逆止弁を設計し、薄いPDMSの膜をマニピュレーションする技術により、弁を作製、原理を検証した。また、PDMSマイクロチップの内部に心筋を培養する条件を確立し、自己灌流に必要な中空球内心筋細胞培養の基礎を築いた。さらに、疑似心臓の応用として考えられるインスリンポンプ創成への基礎として、心筋細胞と膵臓細胞の共培養を実現した。課題2に関して、マイクロチップ内に培養した血管内皮細胞が一酸化窒素(NO)を産生・放出していることを確認するために、NOインジケータである細胞(ピクセル)とのチップ内共培養を実現し、NOの放出を確認した。以上から、課題1,2ともに基盤的な技術を確立できたといえ、当初計画を上回るペースで研究が進んでいる。
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