近年、分析・合成反応など様々な化学プロセスを集積化する研究が多く報告されているが、さらに飛躍的な高効率化のためには、ポンプなどの流体駆動デバイスを集積化する必要がある。しかし、流体駆動デバイスは通常電力を用いるため、現在の技術では集積度に限界がある。一方、本研究代表者は生体の細胞は化学的・力学的機能が高度に集約化された素子であり、生体内で高度な流体駆動・制御を実現していることから、これを利用することで飛躍的に集積度の高いマイクロ流体駆動デバイスを実現できると着想した。そこで、本研究の目的はマイクロ構造体と細胞・組織の機能を融合したバイオマイクロデバイスの創成とする。細胞は、心筋細胞および流量センシング機能をもつ血管内皮細胞・流量制御機能をもつ血管平滑筋細胞をはじめ、様々な細胞を用いる。 昨年度は、これまでに開発した心筋細胞で駆動するポンプの改良と、血管細胞の流体制御機能のマイクロチップへの集積化を実現したが、本年度はこれをさらに発展させ、単一細胞での機能デバイスを目指し、マイクロチャネル内での単一細胞パターニング・培養法を確立した。また、実験のスループットを上げるため、従来プライマリーの未凍結細胞でしか構築できなかった心筋細胞ポンプを、市販の凍結細胞で作製できるようなポンプ構造を設計・開発した。さらに、心筋・血管細胞でなく、腎臓の細胞の化学物質分離機能に着目した新原理の分離デバイスを着想し、その実現のためのマイクロチップを設計・試作し、かつ細胞の培養条件を確立し、デバイスの基盤を構築した。以上より、当初計画に記載の心筋・血管デバイスは順調に結果が得られ、それだけにとどまらず得られた方法論を他の細胞を用いたデバイスへも展開しており、当初計画を上回るペースで研究が進んでいる。
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