研究課題
次世代暗号通信である量子暗号通信の実現に向けてもつれ合い光子対の生成とそのオンデマンド操作は非常に重要な技術である。しかし、応用上重要な役割を果たす量子ドット系では、形状異方性や歪みの異方性による電子-正孔交換相互作用のため励起子時状態の縮退が解け、微細構造分裂を引き起こす。この場合、2つに分裂した励起子準位のどちらを経由して緩和したかという経路情報が付与されるため、もつれあいの起源である2項間の重ね合わせが消失し古典的な偏光相関のみを持つ2光子対として観測される。本研究は、インジウムひ素(100)量子ドットの形状制御による微細構造分裂の低減を目的としたものである。まず、インジウムひ素量子ドット上へのガリウムひ素部分埋め込みプロセスによる異方性の出現を確認した。このガリウムひ素埋め込みの異方性は、インジウムひ素子ドットが受ける歪みの異方性、インジウムひ素量子ドットとガリウムひ素部分埋め込み層の相互拡散の異方性を生じる原因となる。そこで成長条件の再検討を実施し、低温・低速条件によって異方性を抑制し、更にディスク形状に最適化したインジウムフラッシュ条件を適用して量子ディスク構造を作製した。ピラー構造と呼ばれる直径100~1000nmの円柱状のナノ構造に加工して単一のナノ構造に光学的にアクセスし、発光信号を直線偏光成分毎に検出し、発光ピークエネルギーの変化量から微細構造分裂を評価した。結果、従来100ueV程度であった微細構造分裂を30ueV程度以下まで低減する事ができた。これにより、外場印加等によるもつれ合い光子対生成へのチューニングへと応用できる可能性が拓かれた。
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