研究概要 |
各々の動物種がもつ種特異的行動が進化の過程でどのような分子基盤を背景に形成されてきたのだろうか?動物行動は、個体が表出する動的な生体情報として生命現象を理解する上で欠かせない重要な対象である。また行動形成は形態形成と並び、自然界における生物多様性をつくる大きな要因でもある。 本研究では、「行動の進化」を中心課題に据え、種特異的行動発現に関わる分子基盤の抽出と実験によるゲノムレベルと行動レベルの両面からの検証を行うことを目的としている。そのために、鳴禽類ソングバードの囀(さえず)り行動とその発声パターンを生成する脳内神経回路に焦点を据えた研究を進めている。 当該年度において、当初の研究実施計画で予定した次の3点について実験を施行した。 1ソングバード種間の分子系統樹の作成。 アジア・オセアニア圏に生息し、かつ日本で入手が可能な7種のソングバードを対象とした。分子系統樹の作成には、ミトコンドリアDNAのチトクロームbやHackett et al.(Science 320,1763-7 2008)で採用された遺伝子群を用いた。 2各個体からの発声パターンの収集解析による囀りの種特異的表現型の抽出。 音素(Syllable)表現型群と時系列配列(Sequence)表現型群の2つのパラメータグループを設定し、種特異的な発声行動表現型を現在抽出している。 3ソングバード脳内遺伝子発現の網羅的ハイスループット解析のためのDNAアレイの利用。 上記7種のソングバードの脳内神経核よりmRNAを抽出し、その1万4千個以上の発現レベルを得るために網羅的な発現解析をスタートした。
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