研究概要 |
各々の動物種がもつ種特異的行動が進化の過程でどのような分子基盤を背景に形成されてきたのだろうか?動物行動は、個体が表出する動的な生体情報として生命現象を理解する上で欠かせない重要な対象である。また行動形成は形態形成と並び、自然界における生物多様性をつくる大きな要因でもある。 本研究では、「行動の進化」を中心課題に据え、種特異的行動発現に関わる分子基盤の抽出と実験によるゲノムレベルと行動レベルの両面からの検証を行うことを目的としている。そのために、鳴禽類ソングバードの囀(さえず)り行動とその発声パターンを生成する脳内神経回路に焦点を据えた研究を進めている。 前年度に得られ以下の3つの情報[(i)ソングバード種間の分子系統樹,(ii)囀りの種特異的表現型抽出,(iii)ソングバード脳内遺伝子発現の網羅的ハイスループット解析のためのDNAアレイの構築]に基づき、当該年度において、種特異的表現型と遺伝子発現レベルを用いて、これらの相関関係を基にした候補遺伝子群の抽出及び、脳内における実際の発現レベルの再検証を行った。これにより多岐にわたる神経伝達物質受容体群が脳内神経核特異的かつ動物種特異的な発現レベルの調節制御が行われていることが明らかになってきた。今後、これらの遺伝子群の神経核の発現レベルと発声パターンの時系列構造の複雑さとの相関関係の有無を検証し、抽出された候補遺伝子の遺伝子発現改変に伴う発声行動への影響を明らかにしていく予定である。
|