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2011 年度 実績報告書

希少食肉目動物の実践的保全にむけた繁殖生理の解明と繁殖生態調査法の確立

研究課題

研究課題/領域番号 21681029
研究機関岐阜大学

研究代表者

楠田 哲士  岐阜大学, 応用生物科学部, 助教 (20507628)

キーワード糞中ホルモン / 食肉目 / 希少種 / 繁殖 / 繁殖生理 / 内分泌 / ホルモン / 保全
研究概要

希少食肉目動物の繁殖生理の解明と繁殖生態調査法の確立にむけた本年度の研究において,主に次の結果が得られた。1.動物園のクマ科とネコ科の希少種7種(ホッキョクグマ,ツキノワグマ,マレーグマ,アムールトラ,ツシマヤマネコ,チーター,サーバル)から糞サンプルを継続的に採取し,繁殖生理状態を長期的に追跡した。2.特に,採血の機会が得られ,血清サンプルを入手できた,チーターおよびアムールトラにおいて,血中と糞中におけるプロジェステロン値間の相関を調べた結果,相対的な高低関係は血中と糞中とで矛盾はなかった(相関係数を求めるまでのサンプル数を集めることができなかったため動態のみ比較)。すなわち,糞中プロジェステロンの動態は,体内(血中)での動態をほぼ反映していることが判明した。3.チーター,アムールトラ,ツシマヤマネコおよびマレーグマの雌個体について,黄体活動の指標としてプロジェステロン,卵胞活動の指標としてエストラジオール-17βまたはアンドロステンジオンを継続的に測定し,行動等の記録との関連性を調べた。その結果,いずれの種も明確な繁殖の季節性はもたず,基本的に交尾排卵様式で,種や個体により程度の差はあるが,稀に自然排卵が起こっている可能性が示唆された。4.ホッキョクグマとツシマヤマネコでは,日本動物園水族館協会種保存委員会の種別繁殖検討委員会において研究データを報告し,動物園での繁殖計画に役立てた。また,公開シンポジウムの開催やインターネット上のコラム掲載を通して,研究概要を一般向けにも発信した。5.野生個体の排泄糞を用いた調査が可能かどうかを明らかにするため,飼育下のアムールトラとチーターにおいて排泄直後に糞を採取し,経過時間ごとの糞中プロジェステロン値を調べた。その結果,両種とも少なくとも排泄後60時間後までは,排泄直後の数値とほぼ変わらないことが明らかとなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

動物園と協働して,クマ科とネコ科の希少種の繁殖生理に関する研究が飼育下個体の調査によって,ほぼ計画通り進展した。特に本年度重点的に取り組んだ,チーター,ツシマヤマネコおよびマレーグマでは,長期間の研究によって,種の繁殖生理学的特性が明らかにでき,その一部は学会発表や論文発表することができた。また,野外調査において必須となる,屋外採取糞の分析可否に関する基礎的検討も進んだ。

今後の研究の推進方策

希少種,特に大型種の繁殖生理に関する調査研究は,短期的な実施や少数個体の解析では繁殖機会や繁殖成功例も限られるため,真の生理情報が得られない。そのため,引き続き多数の動物園と連携を深めて,より長期的な視点で継続的に行う。次は最終年度となるため,これまでに野生個体から収集蓄積してきたサンプルの分析を進め,飼育個体から得たデータを基盤に比較し,野生個体からのデータの評価を試みる。

  • 研究成果

    (14件)

すべて 2012 2011 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (10件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] ツシマヤマネコを含むネコ科動物の繁殖生理に関する研究2012

    • 著者名/発表者名
      楠田哲士, 足立樹, 吉崎友紀, 下川優紀, 土井守
    • 雑誌名

      JVM獣医畜産新報

      巻: 65 ページ: 199-203

  • [雑誌論文] ツシマヤマネコの繁殖にむけた動物園での性ホルモン測定の利用2012

    • 著者名/発表者名
      下川優紀, 菅原愛, 荒木仁美, 山本幸介, 佐々木真一, 熊谷岳, 楠田哲士, 羽山伸一, 小林和夫
    • 雑誌名

      JVM獣医畜産新報

      巻: 65 ページ: 204-208

  • [雑誌論文] Fecal progestagens to detect and monitor pregnancy in captive female cheetahs (Acinonix jubatus)2011

    • 著者名/発表者名
      Adachi I, Kusuda S, Kawai H, Ohazama M, Taniguchi A, Kondo N, Yoshihara M, Okuda R, Ishikawa T, Kanda I, Doi O.
    • 雑誌名

      J Reprod Dev

      巻: 57(2) ページ: 262-266

    • DOI

      DOI:http://dx.DOI:. org/10.1262/jrd.10-057T

    • 査読あり
  • [学会発表] ホッキョクグマのペアリングから出産準備までの飼育管理について2011

    • 著者名/発表者名
      佐橋智弘, 楠田哲士
    • 学会等名
      第37回海獣技術者研究会
    • 発表場所
      秋田県男鹿市
    • 年月日
      20111116-20111117
  • [学会発表] リラキシン及びプロスタグランジンF_2α分泌を指標としたチーターの正確な内分泌学的妊娠判定法2011

    • 著者名/発表者名
      足立樹, 間瀬知弥美, 楠田哲士, 唐沢瑞樹, 谷口敦, 近藤奈津子, 下川優紀, 大峡芽, 川上茂久, 土井守
    • 学会等名
      第17回日本野生動物医学会大会
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      20111001-20111002
  • [学会発表] マレーグマにおける発情に伴う行動パターンの変化と糞中ホルモン動態との関係2011

    • 著者名/発表者名
      野田瑞穂,斎藤圭史,中村あゆみ,小島義則,斎藤麻里子,宮田桂子,吉田哲也,山本達也,野島大貴,寺田光宏,楠田哲士,堀 秀正
    • 学会等名
      第17回日本野生動物医学会大会
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      20111001-02
  • [学会発表] 糞中の性ステロイドホルモンを指標とした飼育下ツシマヤマネコ雌雄の繁殖生理モニタリング2011

    • 著者名/発表者名
      吉崎友紀, 足立樹, 永尾英史, 長野理史, 松井桐人, 富岡由香里, 松山薫, 小峠拓也, 秋葉由紀, 前田亮平, 村山友美, 佐藤英雄, 坪田敏男, 土井守, 楠田哲士
    • 学会等名
      第19回希少動物人工繁殖研究会
    • 発表場所
      姫路
    • 年月日
      20110706-20110707
  • [学会発表] チーターの血中リラキシン測定による妊娠判定の有用性2011

    • 著者名/発表者名
      足立樹, 楠田哲士, 皆川至, 川上茂久, 大峡芽, 堀達也, 筒井敏彦, 高坂哲也, 土井守
    • 学会等名
      第19回希少動物人工繁殖研究会
    • 発表場所
      姫路
    • 年月日
      20110706-20110707
  • [学会発表] 飼育下におけるチーターの行動,鳴き声と雌の糞中エストラジオール-17β含量推移の関係2011

    • 著者名/発表者名
      井門彩織, 足立樹, 楠田哲士, 谷口敦, 唐沢瑞樹, 近藤奈津子, 清水泰輔, 野本寛二, 吉原正人, 土井守, 安藤元一, 佐々木剛, 小川博
    • 学会等名
      第19回希少動物人工繁殖研究会
    • 発表場所
      姫路
    • 年月日
      20110706-20110707
  • [学会発表] 雌雄ホッキョクグマの国内飼育下における繁殖生理状態に関する調査研究2011

    • 著者名/発表者名
      楠田哲士,村澤亨樹,足立 樹,土井 守,福井大祐,林 輝昭
    • 学会等名
      第19回希少動物人工繁殖研究会
    • 発表場所
      姫路
    • 年月日
      20110706-07
  • [学会発表] 糞中の性ステロイドホルモン動態からみた雌マレーグマの発情周期について2011

    • 著者名/発表者名
      楠田哲士,中村あゆみ,野田瑞穂,斎藤圭士,濱田美咲,古川善正,土井 守
    • 学会等名
      第19回希少動物人工繁殖研究会
    • 発表場所
      姫路
    • 年月日
      20110706-07
  • [学会発表] ツシマヤマネコを含むネコ科動物の繁殖生理に関する研究2011

    • 著者名/発表者名
      楠田哲士,足立 樹,下川優紀,吉崎友紀,土井 守
    • 学会等名
      公開シンポジウム「ツシマヤマネコにおける域外保全の科学」
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      2011-11-26
  • [学会発表] ツシマヤマネコの繁殖にむけた動物園での性ホルモン測定の利用2011

    • 著者名/発表者名
      下川優紀,荒木仁美,山本幸介,佐々木真一,熊谷 岳,楠田哲士,羽山伸一,小林和夫
    • 学会等名
      公開シンポジウム「ツシマヤマネコにおける域外保全の科学」
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      2011-11-26
  • [備考] 申請者や所属機関が作成したwebサイトではないが,本研究内容を一般向けに紹介したページ

    • URL

      http://www.doubutsu-no-kuni.net/?cat=52

URL: 

公開日: 2013-06-26  

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