研究課題
希少食肉目動物の繁殖生理の解明と繁殖生態調査法の確立にむけた本年度の研究において,主に次の結果が得られた。1.雄ツシマヤマネコの糞中テストステロン(T)代謝物含量は1 歳未満の個体で低値を示したが,2~10 歳までの個体では2倍以上有意に高く,冬季(12月,1月,2月)に高値を示す個体が多く認められた。飼育下における雄の性成熟は2 歳頃であると推察され,2 年目の冬から繁殖期にむけて精巣活動が活発になっていくと考えられた。2.動物園飼育下のアムールトラにおいて,妊娠期,黄体期およびそれ以外の時期の雌と雄の各ホルモン測定値を比較検討した。雌雄のプロジェステロン(P)-T間およびP-アンドロステンジオン(AD)間において,顕著な分布傾向の違いが認められた。さらに,雌雄間でP/T比およびP/AD比の平均値を算出したところ,「妊娠期・黄体期の雌>その他の時期の雌>雄」の順に顕著な差が認められ,糞中ホルモン値の分布傾向から性判別ができる可能性が示唆された。3.動物園のクマ科とネコ科の希少種5種(ホッキョクグマ,マレーグマ,ツシマヤマネコ,スマトラトラ,チーター)から排泄糞を定期的に採取し,生理状態をモニタリングすると共に,各種の排卵有無の判断や妊娠判定を実践し,域外保全の取り組み(動物園の繁殖計画)に役立てた。4.野外生息地で採取されたアムールトラとアムールヒョウの糞(糞中DNAから性判別)を用いて,糞中の性ステロイドホルモン代謝物含量を測定し,飼育下個体から得た基盤データと比較することにより,野生個体の繁殖生理状態を評価することを試みた。特にアムールトラでは,野生雄の糞51サンプルは飼育下雄のサンプルの濃度分布に一致し,また野生雌の糞18サンプルは飼育下雌の分布傾向と比較して黄体期や妊娠期のものは含まれていないと判断できた。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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動物園研究
巻: 13/14 ページ: 8-16
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