研究課題
観察者が動物に自明のものとして当てはめる、オス/メス、オトナ/コドモ、母親/子、優位/劣位といった区分が、当事者にとって実際の相互行為の中でいかに組織化されるのか/されないのかを明らかにすることを目的に、国内の飼育チンパンジー間、およびチンパンジーと飼育者間の相互行為に関する資料を、ビデオとフィールドノートを併用して毎月1回収集した。第一回境界研究会に於いて、この成果の一部について発表・討論をおこなった。この発表では、形態計測という明瞭な目的、機材、行為パターン(計測パターン)を持つ活動の後におこなわれる、飼育者とチンパンジー間の遊びの場面に着目した。ヒトが主に主導する計測場面と異なり、遊び場面ではチンパンジーが大きな役割を果たす。チンパンジーとヒトが、何かを一緒にしようとするとき、遊ぶことはそれとなく共有されているにしても、どんな遊びをはじめるのか、誰と誰が遊ぶのか、といったことは予め決定できるわけではない。双方が少し動いては相手の出方を見ることの繰り返しの中で、はじめて何かの遊びになり、参与するメンバーも決まっていく。そこでは、各個体の存在カテゴリーではなく、そこで共に何をなすかという(喧嘩ではなくて遊び、あの遊びではなくこの遊び、といった)行為レベルでの境界形成が重要なのは言うまでもない。このことは、実際にヒトと動物が関わるさいの自然(チンパンジー)と文化(ヒト)という区分の自明性や有効性を疑問に付す有効な証拠となるとともに、自然/文化の対立軸そのものの境界領域を扱う効果的かつ重要な出発点となる。こうした問題についての人類学的位置づけと展望について議論するため、若手文化人類学者たちとともに研究会を立ち上げた。海外調査については、体調不良のため来年度に延期した。また、チンパンジー社会の人間理解について、昨年度に引き続き文献収集と分類をおこなった。
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"The Ecological Impact of Long-Term Changes in Africa's Rift Valley" Plumptre AJ (Ed.). NOVA Science Publishers
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