今年度は、まず海外調査として台湾および韓国において、戦前の日本人町の書店ついての図書調査および現地調査を行った。台湾においては、台湾大学での資料調査を行い、戦前の台北における主要書店についてのよい資料の発見などに恵まれた。台湾政治大学では、大学院の授業に参加して戦前台北の日本人書店についての講演「<外地書店>から見える近代日本の出版文化と文学」を行い、教員や大学院生たちと討議し、得るところが大きかった。また台中に赴き、台中の旧日本人街の現地調査を行い、中興大学の教員と意見交換も行った。韓国では東国大学において「第二次世界大戦以前における〈外地書店〉の展開」という講演を行った。韓国文学および韓日比較文学を専攻する教員、大学院生たちが参加し活発な質疑が交わされた。ソウルでは国立図書館にも調査に行き、戦前ソウルの日本人書店についての資料を入手した。ソウル市内において、旧日本人街の現地調査を行った。また、今年度は米国の日系移民が第二次世界大戦下に強制収容された際、収容所において刊行されていた諸雑誌についての分析も行った。これについてはまだ調査が終了していないが、その途中成果を含む研究報告を、韓国の高麗大学において「境域から読めること-日系アメリカ移民の日本語文学-」と題して行い、また同名の論文を『日本研究』(高麗大学、2011.2)にも掲載した。いずれも雑誌『怒濤』『鉄柵』などで活動していた、ある日系人文士の評論を読み解くことから、作業を行っている。
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