研究課題
生後2年間,乳児が母語の音韻,韻律,語彙を獲得する過程に伴って,大脳は大規模な脳内回路の再編成を行い、言語機能は主に左半球に側性化する。本研究はその発達過程の仮説的モデル「音声言語獲得の大脳半球側性化モデル」を海外機関と連携して検証するものである。このために新生児から2歳までの乳幼児に対して,様々な音声刺激に対する脳反応を近赤外分光法で計測する。併せて音声言語の行動学的実験も行い,脳反応データとの関係から検討する。3年間の研究の結果、研究の目的通りに仮説的モデルであった「音声言語獲得の大脳半球側性化モデル」を、日本人乳児、フランス語圏乳児についてNIRSによる脳機能計測を行うことで客観的に検証することができた。例えば、音韻や韻律処理における新生児の脳活動は音韻については充分に側性化が行われておらず、韻律処理については右半球の優位性が確認された。このことは仮説モデルで示した通り、発達初期の機能側性化は音声の音響的性質に大きく依存し、ゆっくりした韻律処理は右側頭で処理され、音韻の中でも比較的遅いスペクトル変化を持つ母音は両側頭部で処理されるという仮説と一致していた。但し、素早いスペクトル変化を新生児は必ずしも左側頭部優位に処理しないことも別の新生児実験で示され、仮説の修正が必要となった。以上の研究を含む我々の研究結果とこれまでの脳機能研究をメタ解析し、レビューした上で、「音声言語獲得の大脳半球側性化モデル」を提起する論文を研究統括として出版した。
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