本研究の特徴は、労働者集団としての性格、すなわち同一事業所に属する労働者の平均学歴、平均勤続年数や男女比を考慮した賃金関数の推定を、雇用者・被用者マッチデータを用いて国際比較を行う点にある。研究を遂行するにあたっての最大の留意点はデータセットの確保と利用である。 2009年度は日本についてのデータの確保を最優先した。具体的には、厚生労働省より賃金構造基本統計調査、雇用動向調査、労使コミュニケーション調査、就労条件等実態調査の調査個票に関して、さらに総務省より事業所・企業統計調査の名簿情報に関して、統計法33条に則り目的外利用を申請し、2010年3月時点で利用許可を得た。これらのデータのうち、賃金構造基本統計調査と雇用動向調査は2005年から2008年までの4力年について、労使コミュニケーション調査は2004年調査が賃金構造基本統計調査のうち2005年調査に、就労条件等総合調査は2007年および2008年調査が賃金構造基本統計調査のうち2007年および2008年調査に対応することが判明した。これらの調査について事業所レベルでのマッチングがどの程度成立するかは2010年度以降の研究に持ち越されるが、事業所について一定のデータが確保できたと考えられる。 また、ドイツ(ニュルンベルグ)の労働統計局、オランダ(デンハーグ)の統計局、スウェーデン(オレブロ)の統計局を訪問し、同種のデータが利用可能か検討した結果、ドイツではある程度類似したデータセットが利用可能であることが判明した。
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