研究課題
本研究の特徴は、労働者集団としての性格、すなわち同一事業所に属する労働者の平均学歴、平均勤続年数や男女比を考慮した賃金関数の推定を、雇用者・被用者マッチデータを用いて国際比較を行う点にある。研究を遂行するにあたっての最大の留意点はデータセットの確保と利用である。2010年度は、デンマークにおけるデータの状況を調べた。また、統計法33条に則って2009年度末から2010年度初にかけて厚生労働省より利用許可を得た、賃金構造基本統計調査、雇用動向調査、労使コミュニケーション調査、就労条件等実態調査の調査個票、および総務省より利用許可を得た事業所・企業統計調査の名簿情報を用いて分析を進めた。その結果、賃金構造基本統計調査と雇用動向調査、賃金構造基本統計調査と労使コミュニケーション調査、賃金構造基本統計調査と就労条件等実態調査が名簿情報を介してそれぞれある程度マッチングすることが確認され、たとえば雇用フロー、労使コミュニケーションのあり方、労働時間規制の在り方などが事業所の賃金プレミアムに与える影響を推定することができた。大まかには、雇用フローは賃金プレミアムに対して負の効果を、良好な労使コミュニケーションは正の効果を与える傾向が観察される。ただし、マッチング可能なサンプルが限られることなどから、さまざまな頑健性のチェックが必要であり、詳細な研究結果は2011年度にまとめる予定である。また、デンマーク(オーフス大学)を訪問し、同種のデータが利用可能か検討した結果、デンマークではある程度類似したデータセットが利用可能であることが判明した。
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Koichi Hamada, Anil Kashyap, Masahiro Kuroda, and David Weinstein, eds., Japan's Bubble, Deflation, and Stagnation
ページ: 217-262
浜田宏一・大塚啓二郎・東郷賢編『模倣型経済の躍進と足踏み』ナカニシヤ出版
ページ: 109-132