これまでの太陽電池技術に関する分析に加えて、膜分離技術に関して、科学論文・特許・製品などのデータ・ベースを構築し、大学・企業・公的機関などの間の連携ネットワークをマクロ的に分析するとともに、各アクターからのインタビューを通じてミクロ・レベルの情報収集を行い、企業戦略・公共政策・制度設計の観点から、特に中国における状況に関する分析を行った。データ・ベースを基にして個人・組織名を特定し、その活動を基礎研究・製品開発・社会での実用化という形で時系列に追跡することにより、アクター間での共同活動に着目したネットワーク構造を形成し、それぞれの構造・機能・進化の相違についてシステム的な観点から分析を行った。イノベーション・システムを構成する要素として、知識、アクター、制度を想定し、その構造・機能・進化を同定して理論的なモデルの形成を試みた。マクロなデータ分析とミクロ・レベルでのインタビューなどで得られた情報を基にして、同一の分析手法を各国・地域のデータに応用することで、社会的・文化的に異なる条件でイノベーション・システムのメカニズムがどう異なるのか、実証的な検証を行うことが可能となる。国・地域間でのイノベーション・システムの親和性、その相互作用を通じた変動を理解することで、将来的に日本の優れた技術が海外でも有効に活用されるための可能性と課題も明らかになると期待される。国内にとどまらず、国際的なネットワークの形成がサステイナビリティ・イノベーションの創出、その結果としての産業競争力にどのような影響を及ぼしているか、また新しい科学技術の評価・標準化、知的財産権の活用・管理をどうすべきかなどを考慮する際に、地球温暖化問題における国際的なネットワークの形成を参考にしながら、グローバルなレベルにおける技術と制度の共進化のプロセスへのインプリケーションを議論する必要がある。
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