私は平成23年度から継続して、自身の沖縄・観光・イメージ等の研究をグローバルな文脈に位置づけてきた。特に平成24年度は、沖縄をハワイ・グアム・サイパン・宮崎などとの類似性・連続性においてとらえた。比較や影響関係の視座から、複数の地域を関連づけた点は意義深い。 7月まで、ハワイ関連資料の読解・整理を進め、講義で知見を提示した。これをもとに7月末~8月にはハワイへ、9月上旬にはグアム・サイパンへ行き、資料収集とフィールドワークを行った。沖縄を考える際にも、国内に限定せず、地理的・歴史的な広がりと深みを確保できた。軍事化された場所が、観光地化されもする。現地調査では、その考察の具体的な素材が豊富に得られた。 しかし、復帰後の沖縄の楽園イメージと観光立県には、海外だけでなく国内の他地域からの流れもあり、特に「南国」宮崎の新婚旅行ブームの南下は、沖縄観光を慰霊参拝から楽園観光に転換させた点で決定的であった。私は9~10月、11月のウィーンでの国際シンポジウムの報告準備を進め、この宮崎観光の影響を組み込んで報告した。国内と海外、両方の流れや関係性のなかで、沖縄の変容をとらえ返すことができた。 12月には市民講座の場を活用し、ハワイと沖縄を観光だけでなく、戦争・軍事の面からの考察で、より厚みをもたせられた。一方、同月の衆議院の解散総選挙の際、沖縄の地元テレビの選挙報道について原稿依頼を受け、地元メディアが基地問題や経済振興などの政策と世論の関係をどう報道したか、実証的に細かく検証できた。 3月上旬には、宮崎で資料収集と聞きとりを行い、11月に始めた宮崎研究に、より具体的な中身を与えられた。3月中旬~下旬には再びハワイへ出張し、本研究とテーマが合致する“paradise workshop”で研究報告を行い、貴重な情報交換と研究交流をなしとげるとともに、現地でしか得られない資料・情報の収集も行った。
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