過重債務の予防と解決に向けた制度の構築と、人びとの認識変容並びにネットワーク形成の相互関係に関する経験的研究をおこなった。その目的は、金融市場のグローバル化にともなって拡散し複雑化する過重債務に対応するために、汎用性の高い、実効ある制度を実現するための社会的諸条件と実践知を明らかにすることである。貸手との紛争の現場をよく知る当事者(過重債務者)と、司法の言語と文化に熟知する専門家との協働は、過重債務の予防と解決に向けた支援者ネットワークの核となりうる。その外的効果は、人びとに現場の課題を直感的かつ論理的に伝えて問題解決に向けた社会の機運を高めることである。その内的効果は、諸資源に乏しい当事者の社会的包摂と、当事者の知る現場の課題を絶えず身近に参照することによる多様な価値と利害の調整である。こうした協働型のネットワーク形成の有用性と応用可能性を、国内外での観察を通じて確認することができた。
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