研究概要 |
本年は、申請書に記載した五つのプロジェクトのうち、4つのプロジェクトに関わる実験研究を実施した。具体的には、(1)人々がコストのかかるシグナルとして謝罪を行うのかを検証する実験(渡邊・大坪,2009a,2009b)、(2)コストのかからないシグナルとしての賞賛とお世辞の区別に関する研究(松村・大坪,2009a,2009b)、(3)コストのかかるシグナルとしての信頼行動の効果についての研究(李・大坪,準備中)、(4)コストのかかるシグナルとしての男性の求愛行動についての研究(大坪・吉原,準備中)である。(1)の研究からは、意図せずに不公正な行為をとった者が、その行為についてたとえ何らかのコストを負わなければならないとしても謝罪することが明らかになった。さらに、そのような謝罪行動には個人差があり、平等主義者ほどそのような謝罪を行いやすいことが明らかになった。(2)の賞賛とお世辞に関する研究では、お世辞が用いられやすい状況要因に人々が無頓着な場合とそうでない場合があること、特に自らがコストを負って相手に報いるかどうかを決定する際には人々はお世辞と賞賛の違いに敏感であることが分かった。(3)の研究では、一方が自らの運命を相手にゆだねることは必ずしも信頼行動と相手からみなされないこと、そのため必ずしも相手からの協力行動を引き出さない可能性が示唆された。(4)の男性の求愛に関する研究では、長期的な配偶戦略をとる者ほどパートナーと一緒に時間を過ごすなど時間をコストとするシグナルを用いやすいごとが明らかになった。
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