研究課題/領域番号 |
21683006
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
大坪 庸介 神戸大学, 大学院・人文学研究科, 准教授 (80322775)
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キーワード | 謝罪 / 自己罰 / 遺伝子多型 / 友人関係 / パートナーの応答性知覚 / シグナル |
研究概要 |
本年度は申請書に記載した5つの研究プロジェクトのうち2つに関する実験を実施した。まず、コストのかかる謝罪及び自己罰についての研究プロジェクトでは、自己罰を行いやすいのがどのような人物かを明らかにするために複数の方法での個人差測定と自己罰実験を組み合わせた実験を行った。一般的な性格検査だけではなく、友人と一緒に実験に参加してもらい、友人からどのような人物と考えられているかを測定した。また、参加者のセロトニン・トランスポータ遺伝子の多型及びオキシトシン受容体遺伝子の多型についても調査した。その結果、オキシトシン受容体遺伝子の多型が自己罰傾向とかかわっている可能性が示唆された(この結果については、H24年度に改めて追試検討する予定である)。また、これと並行して場面想定法実験によりどのような相手にコストのかかる謝罪を行うのかを検討してきた。その結果、親しすぎない関係において、相手との関係継続期間を長く見積もっているほどコストをかけた謝罪をしやすいことが明らかになった。この結果は、ひとくちで謝罪といっても、我々は関係の近さや、その関係の継続見込みなどで異なる謝罪戦略を用いている可能性を示唆するものである。 第2のプロジェクトとして、友情及び愛情のシグナルに関する検討を行った。H22年度に行ったシナリオ実験の結果及び近年の動物行動学の知見を踏まえて、社会的な注意が友情・愛情の知覚を促すとする仮説を実験室実験で検討した。その結果、パートナーが自分に注意を払ってくれているという事実がパートナーの応答性の知覚を喚起することが明らかになった。これまでの当該領域の研究では、応答性の知覚と相関する客観的変数が見出されておらず、本研究の知見は応答性の知覚を規定する客観的要因を初めて明らかにしたものと位置付けることができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本申請研究の中心をなすのは5つのプロジェクトのうち、謝罪、賞賛、愛情・友情に関する3つのプロジェクトである。謝罪、友情についてのプロジェクトは、申請書に記載した仮説通りの結果ではないが、着実に成果を上げている。賞賛に関するプロジェクトは、申請書に記載した以上の進展を示し、すでに成果の一部が論文として公刊されている。
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今後の研究の推進方策 |
変更点としては、実験で測定する生理指標に関するものがある。申請時には内分泌系の指標をとる予定であったが、初年度の研究で芳しい結果が得られなかったため、H23年度に遺伝子多型の分析に変更した。H24年度も同様に遺伝子多型を測定する実験を行う予定である。 すでに着実に成果の上がっているプロジェクトもあり、それらの結果については最終年度であるH24年度に論文化する予定である。また、これらの結果の補足的な実験及びH23年度までの実験で明らかになった事実を補強する実験を実施予定である。
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