平成21年度に引き続き、実験環境の整備の拡充を図りながら、連続遂行課題(Continuous Performance Task:CPT)を用い、行動抑制に関する事象関連電位を検討した。収集済みのデータと併せて、分析を行ったところ、Go刺激に対する後期陽性成分P3(Go-P3)とNogo刺激に対するP3(Nogo-P3)では、潜時および振幅の明確な差異が認められ、さらにNogo刺激に対しては反応抑制や刺激のコンフリクト検出に関与するとされる陰性成分N2(Nogo-N2)が特異的に観察された。使用した実験課題と測定条件の妥当性を確認するとともに、これらの成分の変動が個人差によって説明されうるかどうかをパーソナリティ特性から検討した。頭頂部におけるGo-P3の潜時がBIS-11で測定される衝動性傾向に負の相関が認められた。またTCIで測定される新奇性探求は同部位の潜時と正の相関を示した。Go-P3の潜時がパーソナリティ特性の脳活動への反映を示すマーカーとなり得る可能性が示唆された。なお前年度の研究成果の一部は年度初頭の国際学会において発表された。 本大学キャンパスの耐震工事が本格化し、脳波実験室に隣接する建物の改修による騒音のため、実験を一時中断し、年度途中に急遽、騒音および電気的ノイズ対策として簡易シールドルームを導入する運びとなった。導入後は、コンフリクト検出に広く使用されているFlanker課題と行動抑制の検討に利用されるGo/Nogo課題を同時に組み合わせたHybrid Flanker-Go/Nogo課題を作成し、ノイズの低減された良好な測定条件の下で順調に実験データの収集が進められたものの、東日本大震災による建物修繕のために、データ収集および解析は来年度へ持ち越すこととなった。
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