時間学習を伴った時間判別課題時のガンマ帯域反応の個人変動をパーソナリティ特性と遺伝子多型の両面から詳細に検討したところ、学習した時間を正しく弁別できた場合に右下前頭回から側頭葉にかけて出現するガンマ帯域反応(40Hz; 80-120ms)のパワー値と衝動性傾向を測定するBIS-11との間に正の相関が認められた。しかし、ガンマ帯域反応の過活動が障害特性としての衝動性と関連するのかを示すには不十分であった。健常者の示す衝動性傾向とADHD者の示す衝動性傾向は質的に異なる可能性もある。今後はこの結果を基に、両者の示す衝動性傾向を延長線上に見据えた量的なアプローチと、両者を隔てる分水嶺を探る質的なアプローチの両方から捉えていく必要がある。衝動性傾向と時間知覚課題の成績はほぼ無相関関係であったが、時間弁別課題の成績には相関が見られた。衝動性傾向は心理的時間感覚の学習そのものにはあまり影響を及ぼさないが、学習内容を運用することに強く影響を及ぼすことが示唆された。この時間感覚の運用の困難さが、ADHDの問題行動の根底にある可能性がうかがわれる。認知的二重干渉を引き出すことを目的に、色名漢字を使用したFlanker課題をStroop課題と組み合わせたHybrid Flanker-Stroop課題を考案し、被験者30名分の課題実施時の脳波活動を測定した。認知的干渉はStroop課題における不一致条件において最も顕著となり、Flanker課題における不一致とStroop課題における不一致条件の組み合わせではむしろ、反応時間が促進され、純粋な線形性の加法干渉効果を引き出すには至らなかった。事象関連電位では、Stroop課題時の不一致条件と一致条件のdifference waveにおいてN450が認められた。このN450の個人変動に関して、パーソナリティ特性と遺伝子多型の両面から検討中である。
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