研究概要 |
本年度はアーベル多様体のファイブレーションの退化について考察し,その最も単純な場合である単位円盤上のアーベル多様体のファイブレーションに対して,極小モデルを具体的に記述した.これにより,穴空き円盤上の射影的なアーベル多様体のファイブレーションがあった場合,それを単位円盤上のファイブレーションに射影的に延長し,なおかつ付け加えたファイバーの幾何的な性質がわかるようになった.これはラグランジアンファイブレーションの特異ファイバーの性質を知るのに有効であるのみならず,アーベル多様体をファイバーにもつファイブレーションを調べるのにも有用である.現在この結果をさらに一般化させ,穴空き円盤の直積の上に与えられたアーベル多様体のファイブレーションを多重円盤の上に射影的に延長し,その延長で追加したファイバーの幾何的特性を記述する,という結果にまとめつつある.また,その他,国内外のシンプレクティック多様体の成果について知見をとりまとめるため,2011年3月に国際研究集会を開催する予定であったが,自身の二ヶ月にわたる入院および震災の影響により中止せざるを得なくなり,改めて2011年8月に研究集会を開催した.この集会では,予定していた国外からの研究者に震災を理由に来日を断られてしまったことは明記しておきたい。この集会でシンプレクティック多様体の持つ特異点について新しい知見を得ることが出来た.
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