研究概要 |
本課題の目標は大きく次の三点であった. 1. 必ずしも非特異とは限らないシンプレクティック多様体はいつラグランジアンファイブレーションを持つか?2. 持った場合の底空間は射影空間となるか?3. 新しいラグランジアンファイブレーションはどのようにして構成出来るか?24年度はこれらの問題に対し, 部分的ではあるが解答を与えることが出来た. それを各項目について記す. 1. 海外の研究者の結果と合わせることによって, 現在知られている非特異な既約シンプレクティック多様体のうち二つの例外を除いてラグランジアンファイブレーションを持つための必要十分条件を与えた. 2. 1. と同じく, 二つの例外を除いてすべてのラグランジアンファイブレーションの底空間が射影空間となることを示した. また, 底空間が非特異である場合にはすでに射影空間となることは知られていたが, この命題の新しい別証明を与え, 特異点がある場合にも同じ主張が成立することを示した. 1,2 の結果を受けて, これからは残った例外に対しての研究が望まれる. 3. 非特異なシンプレクティック多様体上のラグランジアンファイブレーションに対して, 相対的な層のモジュライ空間は元のラグランジアンファイブレーションのすべてのファイバーが既約が被約であれば, やはり非特異であり, シンプレクティック多様体となることを示した. このファイバーに関する条件はかなりきついものなので, これを緩める方向に研究を進展させたい. また以上の成果は得たものの, 論文等での発表が遅れており, 25年度はその作業に傾注する予定である.
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