ダストは現在の宇宙はもとより、初期宇宙にも大量に存在している。ダストがいつ、どのように形成されたのかを探ることは、宇宙の化学進化や天体の構造進化を理解する上で非常に重要な課題である。この謎を解くカギとなるのは、進化が非常に早く大量のダストを放出する大質量星末期天体である。本研究はこのような天体を従来よりも波長が長い30μm帯中間赤外線で高解像度・モニタ観測し、そのダスト形成過程を正確に知ることで大質量星でのダスト供給に迫ることを目的としている。昨年度までの研究で観測に用いる中間赤外線カメラをほぼ完成させ、アタカマに設置したminiTAO望遠鏡での30ミクロン帯観測も成功させることができた。これは世界初の成果である。今年度の研究では主にリモート観測設備の整備および解析手法の開発を行った。観測サイトは非常に過酷な環境であり、観測者は8時間を超えて滞在が出来ない。そのため1日当たりの観測時間が最大でも7時間しか確保できず、効率的な観測が行えていない。そこで、無線ランを用いた遠隔制御システムを構築し、遠隔地からの観測を可能にすることで観測効率の改善を図った。平成22年春に起きた異常気象の為導入は半年程度遅れてしまったが、22年度末までに無線ランシステム、環境監視システムの導入を行い、遠隔制御システムのインフラを整備することに成功した。平成23年春にはこれを用いた遠隔観測にも成功した(科研費繰越精度を利用)。このような機器整備と並行し、天文学的観測もスタートさせた。平成22年秋の観測では大質量進化末期天体の多数存在するカリーナ領域の観測を実施、eta Carについては十分な精度のデータを得ることに成功した。ここで得られた30ミクロンでのeta Car画像は従来観測よりも解像度が高く、ダストの分布を知るのに非常に有用なデータとなる。また30ミクロン帯の画像データを解析する手法の開発も行った。
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