研究課題/領域番号 |
21684006
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
宮田 隆志 東京大学, 大学院・理学系研究科, 准教授 (90323500)
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キーワード | 星間ダスト / 大質量星 / 赤外線 / 機器開発 |
研究概要 |
ダストは現在の宇宙はもとより、初期宇宙にも大量に存在している。ダストがいつ、どのように形成されたのかを探ることは、宇宙の化学進化や天体の構造進化を理解する上で非常に重要な課題である。この謎を解くカギとなるのは、進化が非常に早く大量のダストを放出する大質量星末期天体である。本研究はこのような天体を従来よりも波長が長い30μm帯中間赤外線で高解像度・モニタ観測し、そのダスト形成過程を正確に知ることで大質量星でのダスト供給に迫ることを目的としている。昨年度までの研究で観測に用いる中間赤外線カメラは完成しており、今年度はリモート観測設備の整備および解析手法の開発、観測研究を行った。結果、山頂に行かずとも夜間観測を実行できるシステムの開発に成功した。これにより日中は有人山頂観測、夜間は山麓施設からのリモート観測が実現でき、一日当たりの観測時間を従来の7時間から15時間以上に改善することができた。また大気からの放射が非常に強くかつ変動が大きい30ミクロン帯の観測データの処理方法を精査し、悪い条件でも正確な画像再生および測光が可能な手法の開発を行った。観測としては6つの大質量末期天体について30ミクロン観測を実施、画像の取得に成功した。これは地上から観測可能な大質量進化末期天体の約半数に相当する。うち1天体については詳細な解析・解釈を行い、間欠的な質量放出現象に加え、定常的な質量放出現象がダスト供給に一定の貢献を果たすことを明らかとした。各現象のダスト供給量を定量的に見積もったのは本研究が初めてである。この成果は博士論文として公表済みである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では大質量進化末期天体であるLuminous Blue Variablesについて30ミクロン帯観測を行う計画であるが、これまでに6つの天体について観測を終えている。これは観測可能天体の約半数に相当する。またモニタ観測も既にスタートさせており、予定通り2-3年に渡る変動を追える見込みである。よって計画はおおむね順調と判断している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は残る5天体の観測と、重点天体の変光モニタ観測を中心に観測を行っていく。天体が観測可能天域にいる時間帯は季節によって変化するため、密なモニタ観測を効率的に行うには日中もリモート観測を行うことが有効である。現在は日光による機器の破損を恐れリモート観測は夜間しか行っていないが、日照センサーなどを追加で設置することで日中リモート観測も実現していきたい。また観測結果の制約や解釈、論文化も精力的に進める。
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