宇宙初期の低金属度環境での雲の分裂過程は、雲の収縮の際の熱進化により大きく影響されることがしられている、特に宇宙最初の星の場合のように100太陽質量を超える超大質量から、現在までの宇宙年齢の間、生存可能な小質量星がいつどのように生まれたのかが重要な課題であり、それに答える為にも低金属度ガスからの星形成の詳細なモデル化が望まれる。これまで我々は一様近似モデルを用いて解析してきたが、この際には収縮率を適当に仮定していたため、その当否がしばしば批判されてきた。今回、星間ガス雲が収縮し原始星が形成される際の進化を、球対称のもと輻射流体力学計算により調べた。また冷却に重要な化学種の量を正確に解くために必要な化学反応を選び出し、流体計算に乗せられる程度(15化学種)に小さいものとした。それによるとこれまで一様モデルで仮定していたよりも、球対称収縮の方が収縮が速く進む為、温度が僅かに高めとなることが分かったが、おおよその進化はこれまで用いてきた一様近似モデルと一致することが分かった。 宇宙初期の低金属度環境での超大質量形成モードから小質量星形成モードへの移行においてはダスト冷却過程が重要な役割を果たしたと考えられている。我々は以前、初代星の超新星爆発時に形成された宇宙最初のダストをモデル化し、その際の低金属度雲の収縮時の熱進化を解析した。しかしながら、形成と同時にダストは超新星残骸中で破壊も受ける。とりわけ逆行衝撃波による破壊の影響は甚大であり、ダストは質量にして約10%ほどしか生き残らない。そこで破壊過程も考慮して低金属度雲の収縮時の熱進化過程を考察し、その結果をもとに小質量分裂片の形成条件(ダストの組成、サイズ分布など)に制限を与えた。
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