研究課題
金属度がゼロの宇宙最初の星の形成について、軸対称性を課した2次元の輻射流体計算を実行することで、現実的な円盤を通じての降着進化の場合に形成される星の質量を見積もることが出来た。中心星の質量が40太陽質量になった段階で、円盤ガスが光解離による加熱による蒸発してしまい、星への降着が止まることが分かった。この結果はこれまで低金属度星の重元素組成比から予想されていた初代星の質量とよく一致し、それまでの理論(太陽の100倍を超える大質量星の形成を予想していた)と観測の矛盾を解決した。この結果は宇宙の初代星への降着が止まり、一人前の主系列星になるまで計算した最初の多次元計算であり、非常なインパクトをもって受け入れられ、国内の多くのテレビ・新聞で報道されたのみならず、米国でもいくつかの主要メディアで報道された。以上は宇宙初代星の典型的な場合であるが、特殊な環境下では超大質量星が形成される可能性が指摘されており、宇宙初期に発見されている超大質量ブラックホールの起源として興味深い。そこで、この形成環境の条件を調べた。その結果、これまで考えられてきた極めて輻射場が強い場合だけでなく、高密度の衝撃波が起こる場合でも可能となることが分かった。またこのような条件は初代銀河の形成時に実現される可能性が高いことを指摘した。重元素と星間ダストがある程度存在する場合の星形成に関しては、以前の私の研究により低質量(太陽質量以下)の分裂片、ひいては星が誕生することを指摘していたが、最近、実際にハロー中で発見されたこれまでで最も低金属度な星の場合でも、ダスト冷却による分裂によって小質量星が形成されえるので、理論的に矛盾がないこと指摘した。
2: おおむね順調に進展している
研究補助者の採用が一年遅れ、その間は研究代表者が一人で研究を遂行しなければならなくなったため、計画に遅れが生じた。しかし半年計画を延長し、繰り越した経費により新規に研究補助者を採用したことで、遅れをほぼ取り戻せたと考えている。
計画最終年度となる次年度も研究補助者を継続して雇用し、低金属度ガスからの星形成過程についての数値実験を実行する。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 2件)
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