本研究では、90%の同位体分離をいった136Xeを液体シンチレーターに溶解し、極低放射能環境下であるカムランド検出器中のミニバルーンに満たして実験を行う事を検討している。 本年度は、Xeガス中の136Xeの割合が予定通りに90%の濃度を保っているか測定可能な装置を、残留ガス分析計(RGA)を元にして開発した。この装置を使用し、1つのサンプルについての濃度測定を行った結果、想定通りの濃度を示した。順次、すべてのサンプルについての測定、およびガス中の不純物の測定を行うための準備を開始した。 本計画で使用するミニバルーンのフィルムの選定については、エバールフィルムとナイロンフィルムを用いて液体シンチレーターへの耐性、ガスバリア性、強度、光透過度、長期安定性が問題無い事を確認した。一方、極低放射性不純物の素材を使用したいという観点から、接着剤を使用せず溶着のみでバルーンを製作する事を検討しているが、ナイロンについては熱溶着が難しい。この問題について研究を行った結果、インバルス溶着という手法であれば溶着可能であるという結果が得られた。この結果により、高いガスバリア性と作業性、ピンホール耐性に優れたナイロンとエバールの多層膜を使用する可能性が切り開かれた。放射性不純物については、エバールフィルムを作成する過程においてピンホールを避ける為に導入する物質がカリウム40を含んでいるという事が判明した為、この物質無しで作成する事が検討されている。また、ナイロンについては、フィルムにする前段階のペレット状態では問題が無いが、フィルムでは基準値よりも高濃度になってしまっているため、作業環境のクリーン化を行う事が提案されている。 バルーンおよび吊り紐の設計を検討するために、1/4スケールのポリエチレン製のバルーンを作成した上で水中での送液テストを行った。このテストの結果を反映させた結果、ほぼ最終に近い設計が完成した。
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