本研究では、90%の同位体分離を行った136Xeを液体シンチレーターに溶解し、極低放射能環境下であるカムランド検出器中のミニバルーンに満たして実験を行う事を検討している。 本年度は、前年度までで開発済みのクリーンナイロンフィルム、およびナイロンフィルムの溶着技術を使用したミニバルーンの製作を、クラス1のスーパークリーンルームで行った。同様にミニバルーンと配管の接続管および検出器内部に挿入時に必要となるコルゲート管(フレキ管)との接続管についても制作を行い、製作後はミニバルーンから接続管までヘリウムリークテストを行う事で漏れ箇所が無い事を確認している。また、検出器内へミニバルーンを設置する際に使用する、有機液体である液体シンチレーター中で使用可能なモニターカメラを開発・製作し、ミニバルーン内へキセノン溶解液体シンチレーターを送液するためのフランジ・配管についても最適化を行った上で製作した。これらについては、すべてスーパークリーンルーム内での洗浄および乾燥を行っている。 すべての準備が整った8月中旬から、検出器内へのミニバルーンの設置およびキセノン溶解液体シンチレーターの送液を行った。現地では、最初にバルーン投入時に必要となるモニターカメラを設置した。次に前年度投入試験で養成したエキスパートチームを中心として、カムランド検出器内部へミニバルーンの投入を行った。無事ミニバルーンの設置と、これに続くキセノン溶解液体シンチレーターの送液に成功し、330kgの90%濃縮を行ったキセノン136を用いた二重ベータ崩壊探索実験、KamLAND-Zenがスタートした。 実験開始後KamLAND-Zen実験は順調にデータ収集を行い、78日分のデータを用いたニュートリノを伴う二重ベータ崩壊(2νββ)の寿命測定およびニュートリノを伴わない二重ベータ崩壊事象(0νββ)の探索の最初の結果を発表した。2νββについては2.38±0.02(stat)±0.14(syst)×10^<21>yrという測定値、0νββについては>5.7×10^<24>yr(90%CL)という下限値を設定する事に成功した。
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