本研究では,これまでの実験を上回る精度で,微小距離での重力の逆二乗則の検証を行い,余剰次元に対する実験的な知見を得ることを目的としていた.そのために,超伝導体を用いた捩れ振り子,レーザー干渉計を用いた精密測定装置と,精密なソースマス駆動による微小重力場変動部等を開発し,重力測定実験を行った.レーザー干渉計としては,Nd:YAGレーザーを光源とし,真空槽内の一体型定盤上にマイケルソン干渉計を構成することで,低ドリフトでの微小計測を実現した.また,超電導磁気浮上システムの評価では,浮上力やダンピング係数の測定を行い,テストマス設計のための基本データを取得した.また,これらを組み合わせることにより,真空槽に収められたテストマスを超電導により浮上させ,その微小回転変動をレーザー干渉計で測定する,という一連の実験装置を完成させた.また,テストマス近傍でソースマスを変動させることによって励起された重力変動の測定を進めた.得られた結果は,予想される重力の大きさよりも大きく,電磁場など余分な変動成分が混入していることが示唆される結果となった.その結果を受けてシールド部品の改造・製作を進めた.結果として、重力の逆二乗則に対する検証結果として補正項の大きさ|α|<8 という結果を得た. これらの結果は、数本の論文としてまとめられた。特に,2011年に初期の実験結果をPhysical Review Letter誌に発表した論文は、 Editor's selectionに選ばれている。また、大学院学生がこの装置を用いてまとめた博士論文は、物理学会若手奨励賞を受賞した。
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