本年度はJ-PARCのK1.8ビームラインが完成し、そのコミッショニングを行った。ビーム強度は最終目標値の1/100程度以下と非常に弱かったものの、K中間子の観測・同定、ビームライン上の各検出器の動作確認・性能測定などを行うことが出来た。その結果、これら他の実験と共通して使う装置については、設計通り動作していることが確認された。特に、ビームラインスペクトロメータで良い運動量分解能(δp/p~0.1%以下)が得られていること、K中間子分離のためのTOF検出器(要求時間分解能150ps FWHMに対して130ps程度)・エアロジェルチェレンコフ検出器(π中間子を96%以上の割合で棄却)で所定の性能が得られていることが確認できた。 その一方で、本研究専用で使う装置を製作した。その主なものはターゲット下流におけるドリフトチェンバーで、その仕様を決定し、製作を行った。このドリフトチェンバーはセルサイズ6mmとこれまでのもの(10mm)より細かく、より高いビーム強度まで耐えることができる。また、より高いビーム強度に耐える検出器として、シリコン検出器を購入した。さらに、本研究で用いる既存の実験装置の移動、補修などを行った。光電子増倍管などには故障していたものがあったので、一部を交換した。 全体として、本研究の準備は順調に進んでいる。今後に向けての主な問題は、J-PARCが供給するビームの質と量に関するものであり、今後徐々に改善されるものと期待している。
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