2010年度は、本研究のために専用で用いる装置・架台の製作・テストを行った。まず、2009年度に制作したドリフトチェンバーは期待通りの性能が得られた。シリコン検出器については、電子ビームだけでなく、陽子ビームでのテストを行い、遅い粒子と早い粒子を識別可能なことを確認するとともに、読み出しの高速化を行った。新しい読み出し法であるが、単体テストでは5kHzの読み出しに成功したが、今後他のシステムと統合してのテストが必要であると考えている。また、ドリフトチェンバーやシリコン検出器のためのサポート架台の部品を購入した。再利用を予定している古い装置については、シンチレーターの改造と壊れたエアロジェルの代替品購入を行い、実験できる準備がほぼ整った。一方で、J-PARCのK1.8ビームラインではE19実験のデータを取得し、ビームラインの機器がすべて正常に動作していることが確認された。 しかしながら、3月11日に起きた地震により、本研究にもいろいろな影響が見られた。シリコン検出器など一部の装置については壊れていることがわかったが、全体としてどれくらいの被害があったのかについては未だにわかっていない。J-PARCの運転に関しては1年程度の遅れが見込まれている。本研究としても、まずは被害状況の確認および壊れた装置の修理・復旧にまず全力を上げ、再び実験ができる体制を整えたいと考えている。
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