宇宙一明るい爆発現象であるガンマ線バースト(GRB)は、宇宙最強の加速器である。始動しはじめた地上の加速器LHCやJ-PARCと同様、GRBはさまざまな素粒子を生成する宇宙の素粒子ファクトリーとみなせる。一方、天体観測ではさまざまな粒子を捉える全粒子天文学が急成長している。本研究では、GRBがガンマ線以外にもどのような粒子を放出するのかを明らかにし、全粒子天文学の理論的基礎を構築することを目的とする。22年度は以下の研究を行った。 (1)GRBからの電子・陽電子対について考察し、最近PAMELA実験が確認したGeV領域の陽電子宇宙線の超過の原因になっている可能性を初めて指摘した。この超過は起源がダークマターか天体かで大問題になっている。その他、白色矮星パルサーが起源である可能性も初めて提唱した。 (2)電子宇宙線の観測によって、どのように宇宙線が超新星残骸から星間空間に逃げ出すのか、特にそのエネルギー依存性を調べることができることを初めて示した。 (3)ヘリウム宇宙線についても、スペクトルが陽子宇宙線と異なるという異常が見つかった。我々は宇宙線が元素の非一様な領域で作られる必要があることを初めて指摘し、そうであれば、宇宙線の逃避がエネルギー依存することと組み合わせれば自然と観測を説明できることを示した。 (4)最近GRBからGeVガンマ線が検出され、GRBを起こすジェットの速度が予想以上に高いことが分かり、問題になっている。そこで、速度を標準モデルよりも早くする物理機構を初めて提唱した。一方で、GRBのパルスの重ね合わせを考慮すると、もう少し速度が遅くても観測を説明できる可能性を示した。 (5)宇宙最初の初代星がガンマ線バーストを起こすことができることを初めて示した。
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