2009年度は単一カーボンナノチューブ架橋型トランジスターの試作を中心に研究を進めた。 単層カーボンナノチューブに電極からスピンを注入し、フォトルミネッセンスを利用して電子スピンを検出するためには、単一の単層カーボンナノチューブを架橋型トランジスター構造に組み込む必要がある。まず、発光効率が高いためにフォトルミネッセンス測定に適しているカーボンナノチューブの架橋構造の作製方法を確立した。酸化膜つきSi基板に溝を加工し、触媒を溝の近傍に配置した上でアルコール化学気相成長により単層カーボンナノチューブを合成した。フォトルミネッセンス測定による評価を用いて、カーボンナノチユーブの発光を確認し、架橋構造の作製に適した化学気相成長の条件を見出した。次に、単一カーボンナノチューブ架橋型トフンジスターの作製を試みた。溝と電極をあらかじめ加工した基板上に触媒を配置し、その後カーボンナノチューブの合成を行った。このように最後に合成を行うことにより、カーボンナノチューブは清浄な状態に保てるため、その本来の特性を測定できることが期待できる。ところが、架橋せずに溝に落ちたカーボンナノチューブにより、バックゲートと電気的に短絡することや大きな漏れ電流が起きるといった問題点が浮上した。そこで、溝の加工後に熱酸化を行ったところ、ゲートの絶縁特性の改善に成功した。これにより、発光測定と電気測定を単一の単層カーボンナノチューブに対して行うことが可能なデバイスを実現した。
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