2011年度は単一の架橋カーボンナノチューブにおける低温フォトルミネッセンス測定を中心に研究を進めた。 カーボンナノチューブにおけるスピンの光検出を実現するため、低温磁場中でのフォトルミネッセンスを可能とする装置を作製した。電磁石により200 mTの磁場を印加可能で、温度5Kまで冷却可能であり、なおかつデバイスへの配線を導入できる顕微分光装置を立ち上げ、アモルファスシリコンを用いた光検出スピン共鳴顕微鏡として動作することを確認した。架橋カーボンナノチューブを対象とする実験にも取り組み、低温磁場中でのフォトルミネッセンス測定を実現した。チップ上にカーボンナノチューブを架橋させる溝とマイクロ波を導入するための電極および配線を加工し、触媒を溝付近に配置して化学気相成長により単層カーボンナノチューブを合成した。走査ミラーによる反射像およびフォトルミネッセンス像を利用して架橋カーボンナノチューブを見出し、励起分光によりそのカイラル指数を同定した。液体ヘリウムを用いた低温測定で、単一ナノチューブのフォトルミネッセンスを長時間計測し続けることに成功している。 カーボンナノチューブへの電気的スピン注入を視野に入れた架橋型トランジスター構造における測定では、フォトルミネッセンスと光伝導度の同時測定に成功し、カイラル指数を明らかにした上で単一ナノチューブに対する測定を行うことにより励起子の解離に関する知見を得た。強磁性コバルト電極を用いたデバイスの作製にも成功している。
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