研究概要 |
価数揺動系でありながら、量子臨界現象と超伝導を示す初めての物質系YbA1B4に注目し、その新規な物性の起源を解明するために以下の実験研究を行った。まず、新物質β-YbA1B4については圧力下の電気抵抗測定から、常圧の量子臨界性とは異なる磁気秩序に伴う量子臨界性が存在し、それがFeをA1サイトに置換して化学的な圧力効果として現れる常圧での磁気秩序相とその臨界性に連続的につながることを明らかにした。次に価数揺動系の重い電子物質α-YbA1B4についてはFeを置換することで化学的な圧力をかけることに成功し、急激に価数および体積が変化する相転移点を見出した。この相転移近傍において現れる異常な物性はこの相転移により現れる反強磁性を磁場で抑えることで現れる量子臨界現象と明らかにことなる振る舞いをすることがわかってきた。このことから、ゼロ磁場での価数の変化を伴う相転移近傍の異常な金属の振る舞いは価数に関連した量子臨界現象が現れている可能性がある。さらに、価数揺動と異常金属状態との関係を調べるために、新しく立方晶系SmTi2A120,SmV2A120,SmCr2A120の単結晶試料を作成し、それらがSm系では非常に珍しく、近藤効果を示すこと、また、それらが強い価数揺動を持って現れることを発見した。また、Ti,V,Crと置換をすることにより近藤温度をシステマティックに制御できることを見出した。物性測定とミュオン共鳴実験からこれらの物質が反強磁性秩序を示すことを明らかにした。また、立方晶系PrTi2A120については、中性子実験、ミュオン共鳴実験から軌道の自由度を持った非磁性の基底状態を持ち、強的な四極子秩序を持つことを確認した。最後に、新しい量子スピン系としてBa3CuSb209の系に着目し、この系がこれまでに考えられていた三角格子ではなく、蜂の巣格子を短距離で形成していること、また、そのために、遷移金属化合物としては初めて低温までヤーンテラー効果を示さないこと、さらには、スピンも低温まで液体状態を示すことがわかった。
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