本研究の目的は2種(87ルビジウムと41カリウム)の共存するボース・アインシュタイン凝縮の間に働く斥力相互作用を用いて、より均一性の高いポテンシャルを実現することにあった。平成21年度には磁気トラップ内で混合気体の同時ボース・アインシュタイン凝縮に成功しており、光格子のビーム径を広げるための単一縦モード、高強度の1064nmDPSSレーザーの開発にも成功した。しかし平成22年度に磁気トラップからの水漏れが発見され、電磁石の全交換を余儀なくされた。電磁石の交換に伴い、光格子の設計の変更と、周囲の光学系の再調整を行い、BEC中の原子数の最適化を行った。 均一性の高いポテンシャルの実現のためには2種のボース・アインシュタイン凝縮の原子数が安定していることが必須である。しかしボース凝縮した後の原子数は多いときで30%近くも変動したため、その安定化を試みた。磁気光学トラップ中の蛍光量をルビジウム・カリウムそれぞれ観測し、実験開始のタイミングを蛍光量で決めることで1%レベルでの蛍光量の安定化を達成した。その結果、ボース凝縮中の原子数のゆらぎは減少したが、依然、10%以上であったため、その原因を追究した。その結果、カリウムとルビジウムの原子数に負の相関が見られたため、蒸発冷却中の非弾性散乱の影響が大きいと結論した。 このルビジウムーカリウム系における原子数のゆらぎは本研究室のみならず、LENSなど他の研究室でも観測されている。本研究では初期条件の安定化と環境の安定化に集中したが、蒸発冷却後の原子数を観測してフィードバックをかけるなど、能動的な安定化の必要性が考えられる。
|